伊東秀人の目 全日本スキー技術選手権大会 最終日

 2010-03-16
2010年 全日本スキー技術選レポート(3月12日)


◆3月13日

■決勝
◎種目(09:00-14:00)
<総合滑降・整地・ウスバゲレンデ>
<小回り・総合・シャンツェ>

本日、いよいよ決勝。でも天候は朝から雨。早朝には大雨と言っていいほど降っていた雨も、決勝が始まる10時には、少しだけ弱まった。

決勝 ウスバゲレンデ 雨の中のウスバゲレンデ

決勝種目は、ウスバゲレンデの総合滑降と、八方では恒例のジャンプ台ランディングバーンの小回りの2種目のみが行われた。2種目というのは、追う立場も追われる立場も、非常に緊迫した戦いになるものだが、今日もドラマがあった。

大会の展開では、男子が準決勝で同点1位の山田卓也選手と丸山貴雄選手の一騎打ち。どちらが勝っても初優勝と言うこともあり、2人の選手はもとより、それぞれお世話になっているメーカーや所属県連のスタッフ、そして応援してくれている周りの関係者達の緊張の方が僕に伝わってきた。しかし3位と4位につけている優勝経験者、柏木、井山両選手の2人が、それぞれ6点、7点差につけている事実は、初優勝を目指す2人も予断を許さない展開であることは意識していただろう。

また女子では、トップの松沢聖佳選手が2位と12点差の大差をつけているということもあり、何かトラブルでもない限り9連覇がほぼ決まっている状況であったが、個人的には2位につけている金子あゆみ選手やその他の若手の選手達にも、12点差をひっくり返してほしいという、わずかな期待が寄せていた。

ところで、1種目ずつの進行なので、観客の皆さんやスタッフにもわかりやすく見やすい運営になっている。また、決勝種目のスタート順は、1つ前までの種目の順位をリバースしてスタートする方法になっている。但し、この方法でのジャッジメントについては、後から滑る上位の選手に対して、得点を待ってしまう傾向が強くなり問題点が無いとは言えないだろう。

そんな中、最初の種目、ウスバゲレンデでの総合滑降が始まった。雨の中ではあったが、斜面コンディションは、昨日入れたスノーセメントのお陰でザラメ雪が固まり、結構スピードが出て、2つ目のウェーブは今までより警戒して入る必要がある状況であった。

さて、女子の20位からのスタートとなったが、女子の選手の滑りを改めてみる限り、ハイスピードな戦いとなってきている。全日本スキー技術選手権大会というタイトルが付かない限り、このようなスピードでゲレンデを滑るシーンというのは無いだろうと思うのだが、上手さの頂点を競う大会ということからハイスピードでの戦いも必要になるのだろう。但し、全日本スキー連盟の教育本部の本来の目的である「普及」を考えた時に、上手さの価値を誰に認めてもらって、どんな方向に役立てるのかをもっと深く考えなければならないし、そして同時に種目設定や使用スキーなどのレギュレーションに関して、進化させなければならないと感じる。やはり、選手という戦いに終わらせず、この大会がどのような普及に役立つかを、現在に合わせて考え直す必要もあるかもしれない。

金子あゆみ 若手 若手のホープ金子あゆみ選手(総合2位)

また女子選手の滑りだが、上記の通りハイスピード化されたこのような大会においては、ハイスピードでの対応技術を魅せた、金子あゆみ、高橋育美、関塚真美選手などに対して、巧みなターン技術を魅せた松沢聖佳、中田良子選手などのように、各選手達が自分の攻め方を知っている選手ほど、その滑りを表現し、そして高得点を出していたように感じた。

男子では、ターン前半の谷回り部分の滑りの評価配分が高まる中、その谷回りの滑りを強調して滑っていくタイプで滑る選手達に対して高得点が出された。技術選という大会や勝敗を分ける流れというのは、ジャッジメントの方向性が非常に重要なこととなる。

大会も最終日となり、4日間あるいは2日間の色々なジャッジメントの流れから、最終日になって選手達がようやく自分の滑りをジャッジメントの流れに合わせて修正し、そして高得点を出すというケースも少なくはないが、このような事が毎年繰り返されるというパターンになるというのは、ちょっと残念である。今後は是非、大会前に、または大会要項に、もっと明確なジャッジメントポイントの詳細が記載され、多くの選手達がそれに向かって十分なトレーニングの時間をかけられるようにする仕組みが、この国のレベルアップにも繋がっていくことと想像する。

ところで、この男子のウスバゲレンデでの総合滑降の種目が、今大会の2つ目のポイントとなった。冒頭にも記載していた、『2つ目のウェーブ』。雪が滑りスピードが増した中での種目となった最終日、この2つ目のウェーブの処理が勝敗を分けた。

なんと、いつもなら決してミスを犯すタイプでない山田卓也選手が、このときに限ってミスを犯した。2つ目のウェーブで浮いた後、切りかえで重心を内側に移動させすぎたため、その後のターン指導で転倒しかけた。それ以外の滑りでは、いつもの山田選手の滑りを見せていたが、ここ一番に決めなければならないところで痛恨のミス。僕の知っている優しい山田選手だからこそ、メンタル的な部分が出てしまったのかもしれない。そして、同点の丸山選手が山田選手の後にスタートしたのだが、やはりいつもとは違って、緊張して地に足が付いていないような滑りをしていたようにも感じたが、、巧みにターンをコントロールしてトップの得点をたたき出した。

最終日が始まる前には、男子の同点トップということで始まった今朝だが、ジャンプ台の最終種目を前にして、トップの丸山選手に対し、5点差で山田選手、そして1種目目のウスバでトップタイの高得点を上げた柏木選手が6点差と迫っていた。

決勝 ジャンプ台 最後の種目バーン ジャンプ台

さて、泣いても笑っても最終種目。ジャンプ台での小回り種目が始まったのは、12:40を過ぎていた。女子の滑りでは、ベテランの切久保深雪選手が、落差のある素晴らしい小回りを見せていた他、37度の急斜面にも関わらず、女子選手のレベルも大きく上がったように感じた。技術的には、落差というのは実は取りやすいのが急斜面だが、その落差をコントロールするのが難しい。つまりターンのワイズ(横幅)とのバランスが必要になる。このワイズをコントロールの条件として、「落差のある良い滑り」などと称されるが、実際に何もしなければ、落ちていくだけのジャンプ台という斜面では、ターンスペースのワイズを広くする意識が、直接技術を表現する大事なポイントとなるのだ。女子選手に限らず、男子選手の滑りに対する評価の傾向も、同じように「落差&ワイズ」=スペース(ターン弧を描く範囲)のような部分が強かったように感じた。

丸山貴雄 優勝 初優勝の丸山貴雄選手

また大会の流れは、女子選手の順位に関しては、15点もの大差をつけて松沢聖佳選手が9連覇を果たした。また、注目の男子選手に関しては、最終滑走者の丸山選手を前に、山田選手が283点という、今回の大会の最高得点を叩き出したが、山田選手の追い上げる気力や急斜面であるという緊張を全く気にしないいつもの滑りで降りてきた丸山貴雄選手に軍配が上がった。山田選手と同じ、今大会最高得点283点。そしてその結果、5点差を逃げ勝って、丸山貴雄選手の初優勝が決まった。

初優勝。地元での優勝。白馬村としては出身者のアベック優勝。そして、全日本スキー技術選手権始まって以来の、親子でのタイトルホルダー。今回の丸山貴雄選手の優勝は、1つ色々な意味で、1つの時代が始まったような気がした。

皆川賢太郎 前走 前走の「皆川賢太郎選手」


さあ、昨年まで選手をしていた僕が見た、今年の全日本スキー技術選手権大会。
松沢聖佳選手が、前人未踏の9連覇。彼女のこの大会に対する執着心が、またいつまでも上手くなりたいという想いが、このような結果を残したのであろう。しかし、その聖佳選手も、まさかの引退。10連覇というひとつの区切りまで、この大会に出場するのではないかと思っていたが、今回の技術選大会を区切りに引退を決めた

また、丸山貴雄選手の初優勝。この技術選で優勝するには、実力もさることながら、運も必要と言われるが、今回の貴雄選手の優勝は、準決勝のコブ種目がキーとなったような気がする。後で知ったことだが、「バンクマジック」という名前をこの世に広めた丸山選手。しかし、ウサギ平新コースには、練習の時に自らの滑りで、ピッチの速いコブを作っていたのだそうだ。そしてそのピッチの速いラインで大会も滑り高得点をゲット。彼の巧みさと、そして勇気が、ライバルを押さえ優勝の二文字を引き寄せたのだと思う。


さて、第47回の全日本スキー技術選手権大会。出場していた昨年よりも、色々な選手の滑りを見ることが出来、且つ大会の運営なども客観的に感じ、多くのものを吸収することが出来たと思う。

そんな中で、最後に一言言うならば、「身近なわかりやすい大会」にしていくことが、必要不可欠であると感じた。日本のスキー文化には、技術選が、その発展の大きな部分を担ってきた。そして今後も、1つの役割として担っていくだろう。しかし、先におこなわれたフィギャアスケートの採点ルールでも、色々な問題点が上げられたように、ジャッジメントで勝敗が分かれる競技では、もっと明確なわかりやすいルールが必要かもしれない。

また、世界の中でも、色々な国が技術選(テクニカルチャンピオンシップ)の運営を試みたが、最終的に残ったのは、韓国だけだった。このアジアの競技として成立させるためには、もっと目指そうとする人に対して、身近な競技会になることが大事であろう。

そのためには、レギュレーションなどの改定を、一般の人達の考えも取り入れた内容に、する必要もあるかもしれない。現在、2本のスキーを購入できるほど、日本は裕福ではない。それでは1本で出来るレギュレーションや、種目設定にすればいいのではないか?などなど、もっともっとこんな事からも身近な大会になることも必要かもしれない。

いずれにしても、「たかが技術選。されど技術選。」僕も何か、今後の日本のスキーを担う、技術選に対して、協力していきたいと思う。

では、皆さん。今回の凄く長い僕のレポートにお付き合い頂き、有り難うございました。
選手として18回出場したこの大会には、色々な思い出と共に成長させられました。しかし、客観的に見せてもらった今回の技術選では、勉強させられました。今後、皆さんも大好きなスキーが、この日本で発展する為は、この技術選自体も成長しなければならない時がきたと感じます。是非、皆さんの思いや考えを、教えて下さいね。一緒に、楽しい日本のスキー環境を作れれば幸いです。

最後に、
松沢聖佳選手。丸山貴雄選手。本当におめでとうございました。
そして、
竹節一夫選手。佐藤久哉選手。宮下征樹選手。森幸選手。松沢聖佳選手。長い間、お疲れ様でした。

伊東秀人
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【2013/12/14 12:29】 | # | [edit]
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【2010/03/20 17:18】 | # | [edit]
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【2010/03/16 15:30】 | # | [edit]












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